操業中の工場改修で注意すべきこと|生産停止を避ける工程計画とは

工場の老朽化や設備更新に伴い、外壁、屋根、床、空調、給排水、電気設備などの改修が必要になることがあります。
しかし、工場では「工事のために長期間生産を止めることが難しい」というケースも少なくありません。
製造ラインを停止すれば、生産量の低下や納期への影響が発生する可能性があります。そのため、工場改修では、単に工事を安全に行うだけでなく、できるだけ生産への影響を抑えながら施工する計画が重要です。
一方で、どのような工事でも完全に操業を止めずに施工できるわけではありません。電気設備や給排水設備の切り替え、大型設備周辺の工事などでは、一時的なライン停止や設備停止が必要になる場合もあります。
重要なのは、「工場を止めないこと」だけを目的にするのではなく、工事内容と生産計画を照らし合わせ、停止が必要な工程を最小限にすることです。
この記事では、操業中の工場改修で注意すべきポイントや、生産停止を避けるための工程計画、仮設、安全管理の考え方について解説します。
目次
操業中でも工場改修はできるのか
工場が稼働している状態でも、改修工事を進めることは可能です。
実際に、操業中の工場では以下のような改修が行われることがあります。
・屋根、外壁の改修
・防水工事
・工場床の補修、塗床工事
・空調、換気設備の更新
・給排水設備の更新
・電気設備の更新
・照明のLED化
・トイレ、休憩室などの共用部改修
・製造エリアの間仕切り変更
・動線改善
・倉庫や作業スペースの改修
ただし、操業中の工場改修では、生産活動と建設工事が同じ敷地・建物内で同時に行われます。
作業員、工場従業員、フォークリフト、製造設備、資材、製品などが同じ空間を利用するため、一般的な建物の改修以上に工程管理や安全管理が重要です。
また、製造するものによっては、粉じん、臭気、振動、異物混入などにも配慮する必要があります。
そのため、操業中の工場改修では、工事内容だけでなく、生産工程や工場内のルールまで把握したうえで施工計画を立てることが重要です。
操業中の工場改修で特に注意すべきこと
操業中の工場では、生産と工事が同時に進むため、さまざまなリスクを想定する必要があります。
生産ラインへの影響
最も重要なのが、生産ラインへの影響です。
例えば、床改修を行う場合、そのエリアを一定時間使用できなくなる可能性があります。
電気工事では、設備切り替えのために停電が必要になる場合があります。空調や給排水工事でも、一時的な設備停止が発生することがあります。
工事を計画する際は、
・どのラインをいつ使用しているか
・停止できる時間帯はあるか
・停止した場合、生産量にどの程度影響するか
・別ラインで代替生産できるか
・休日や設備点検日に工事できるか
などを確認する必要があります。
施工会社側だけで工程を決めるのではなく、生産管理担当者や設備担当者と調整しながら計画することが重要です。
人と工事車両の動線
操業中の工場では、工事関係者と工場従業員の動線が交差する場合があります。
さらに、
・フォークリフト
・トラック
・台車
・製品搬送
・資材搬入
などの動線もあります。
工事車両や作業員が通常の生産動線に入り込むと、接触事故や物流の停滞につながる可能性があります。
そのため、工事エリアだけでなく、資材の搬入経路、廃材の搬出経路、作業員の出入口まで含めて動線を計画する必要があります。
騒音・振動
解体、はつり、穴あけ、アンカー施工などでは、騒音や振動が発生します。
騒音によって作業員同士の声が聞こえにくくなったり、振動が精密機器や製造設備へ影響したりする可能性もあります。
特に精密機器を使用する工場では、小さな振動でも製造品質に影響する場合があります。
騒音や振動が発生する工程は、あらかじめ発生時間帯や範囲を整理し、生産への影響を確認することが重要です。
粉じん・異物混入
工場によっては、粉じんや異物の発生が大きな問題になります。
例えば、食品、医薬品、精密機器などを扱う工場では、工事によって発生する粉じんが製品や製造設備に影響する可能性があります。
そのため、
・工事エリアの区画
・養生
・負圧化
・集じん
・作業員の出入り管理
・清掃
などの対策が必要になる場合があります。
単に工事範囲を囲うだけではなく、工場側の衛生基準や品質管理基準に合わせて対策を検討することが重要です。
臭気
塗装、防水、接着剤などを使用する工事では、臭気が発生することがあります。
臭気が製品へ移ったり、製造工程へ影響したりする場合もあるため、使用する材料や施工時間帯への配慮が必要です。
必要に応じて、低臭材料への変更や換気方法の検討などを行います。
火気の使用
溶接や切断など、火気を使用する工事では、火災リスクへの対応が必要です。
工場内には、製品、原材料、油、薬品など、可燃物が存在する場合があります。
火気作業を行う場合は、工場側の安全ルールを確認し、作業場所周辺の養生、可燃物の移動、消火設備の配置、作業後の確認などを徹底する必要があります。
生産停止を避けるための工程計画
操業中の工場改修では、工程の組み方によって生産への影響が大きく変わります。
生産計画を先に確認する
工事工程を考える前に、生産計画を確認することが重要です。
例えば、
・繁忙期
・生産量が少ない時期
・定期修繕日
・設備点検日
・休日
・夜間の非稼働時間
・ライン切り替え時期
などを確認します。
生産量が多い時期に無理に工事を進めるよりも、生産への影響が少ない期間に集中的に施工した方が、全体として効率的な場合があります。
工事工程だけではなく、生産計画と一体でスケジュールを考えることが大切です。
工区を分けて施工する
工場全体を一度に改修するのではなく、施工範囲を複数の工区に分ける方法があります。
例えば、工場床を改修する場合、
Aエリアを施工
↓
使用再開
↓
Bエリアを施工
↓
使用再開
↓
Cエリアを施工
というように段階的に進めます。
これにより、工場全体を停止することなく施工できる場合があります。
ただし、工区を細かく分けすぎると、工期が長くなったり、仮設や施工準備の回数が増えたりすることがあります。
生産への影響と工事効率のバランスを見ながら工区を設定することが重要です。
夜間・休日工事を活用する
平日日中に稼働している工場では、夜間や休日に工事を行うことで、生産への影響を抑えられる場合があります。
特に、
・停電を伴う工事
・配管切り替え
・騒音の大きい作業
・製造ライン付近の工事
などでは有効です。
ただし、夜間や休日工事では人件費が増える場合があり、周辺への騒音にも配慮する必要があります。
費用と生産停止による損失を比較しながら判断することが大切です。
短時間の計画停止を活用する
「一切停止しないこと」にこだわることで、かえって工事が複雑になり、工期や費用が増える場合もあります。
例えば、電気設備の切り替えなどでは、数時間だけ計画的に停止することで、安全かつ効率的に工事できることがあります。
停止を避けることだけではなく、
・停止時間をできるだけ短くする
・生産への影響が少ない時間帯に行う
・事前に必要な生産量を確保する
・復旧手順を明確にする
といった方法も検討することが重要です。
工場改修で重要な仮設計画
操業中の工場改修では、「工事が完成した後」だけではなく、「工事中に工場をどう使うか」が重要です。
そのために必要になるのが仮設計画です。
仮設通路
工事によって通常の通路が使用できなくなる場合は、従業員や車両が通行できる仮設通路を確保します。
特に工場では、人とフォークリフトの動線を分けることが重要です。
仮設通路を設ける場合は、
・十分な通路幅があるか
・段差がないか
・フォークリフトと交差しないか
・避難経路を妨げていないか
・案内表示が分かりやすいか
などを確認します。
仮設間仕切り
製造エリアと工事エリアを分けるため、仮設間仕切りを設置することがあります。
工事内容や製造環境によって、
・粉じん対策
・騒音対策
・臭気対策
・異物混入対策
など、必要な性能が異なります。
食品工場や精密機器工場などでは、一般的な工事用の養生だけでは不十分な場合もあるため、工場の管理基準に合わせて計画する必要があります。
仮設電源・仮設設備
設備更新によって既存設備を一時的に停止する場合は、必要に応じて仮設設備を用意します。
例えば、
・仮設電源
・仮設空調
・仮設照明
・仮設給排水
・仮設トイレ
などです。
すべての設備を仮設で代替できるとは限りませんが、生産への影響を小さくする方法として検討できます。
仮設ヤード・資材置場
工事には、材料、工具、廃材などを置く場所が必要です。
工場内の空きスペースをそのまま使用すると、生産や物流の妨げになることがあります。
工事前に、
・資材置場
・廃材置場
・作業員の休憩場所
・工事車両の駐車場所
などを整理しておくことが重要です。
操業中工場の安全管理で確認すべきポイント
操業中の工場では、工事作業員だけではなく、工場従業員や物流業者など、多くの人が同じ敷地を利用します。
そのため、工事区域だけを安全にすればよいわけではありません。
工事エリアを明確に区分する
工事区域には、関係者以外が入らないように区画します。
仮囲い、カラーコーン、バリケード、案内表示などを使用し、工場従業員から見ても工事区域が分かるようにします。
工事内容によって危険範囲が変わる場合は、その都度区画を見直す必要があります。
人と車両の動線を分離する
工場ではフォークリフトやトラックが頻繁に移動します。
工事作業員と車両の動線が交差する場所では、接触事故が発生する可能性があります。
可能な限り動線を分離し、交差が避けられない場合は、誘導員や一時停止場所を設けるなどの対策を行います。
工場独自の安全ルールを共有する
工場によっては、
・入場時の服装
・ヘルメットや安全靴
・持ち込み禁止品
・火気使用ルール
・衛生管理
・入退場管理
など、独自のルールが定められています。
施工会社や協力会社まで含めて、工事開始前にルールを共有することが重要です。
緊急時の対応方法を決める
工事中に設備トラブルや事故が発生した場合の連絡体制も整理しておく必要があります。
例えば、
・工場側の責任者
・生産管理担当
・設備担当
・施工会社の現場責任者
・緊急時の停止判断者
を明確にしておきます。
誰が判断し、誰へ連絡するのかを事前に決めておくことで、トラブル発生時にも迅速に対応しやすくなります。
電気・給排水・空調工事では設備停止計画が重要
工場改修では、建物の工事だけでなく、設備の更新を伴う場合があります。
設備更新では、切り替え時に停止が必要になることも多いため、特に慎重な計画が必要です。
電気設備
受変電設備、分電盤、配線などの工事では、停電が必要になる場合があります。
停電によって、
・製造設備
・冷凍、冷蔵設備
・サーバー
・空調
・照明
などが停止する可能性があります。
停電範囲と停止時間を事前に確認し、必要に応じて仮設電源やバックアップ電源を検討します。
給排水設備
配管更新では、断水や排水停止が必要になる場合があります。
製造工程で水を使用する工場では、生産そのものに影響する可能性があります。
断水範囲や時間を整理し、必要に応じて工区を分けたり、休日に切り替え作業を行ったりします。
空調・換気設備
製造環境によっては、温度や湿度を一定に保つ必要があります。
空調設備を停止すると、製品品質や製造工程に影響する場合があります。
更新工事では、設備を順番に切り替えたり、仮設空調を使用したりするなど、生産条件を維持する方法を検討します。
工事前に工場側で整理しておきたいこと
操業中の工場改修を円滑に進めるためには、施工会社だけでなく、工場側でも事前に情報を整理しておくことが重要です。
主に以下のような内容を共有すると、施工計画を立てやすくなります。
・工場の操業時間
・生産ラインごとの稼働状況
・繁忙期、閑散期
・設備点検日や計画停止日
・工事可能な時間帯
・フォークリフトや物流の動線
・製造エリアごとの安全、衛生ルール
・停止できない設備
・停電や断水が可能な時間
・工事による粉じん、臭気、振動の許容範囲
・緊急時の連絡体制
工事の打ち合わせには、施設管理担当者だけでなく、必要に応じて生産管理、設備、安全管理などの担当者にも参加してもらうとよいでしょう。
操業中の工場改修の進め方
1. 改修箇所と目的を整理する
まず、どの部分をなぜ改修するのかを整理します。
老朽化対策なのか、安全性改善なのか、設備更新なのか、生産効率改善なのかによって、優先順位や工法は変わります。
2. 現地調査を行う
改修箇所だけではなく、周辺の設備、製造ライン、搬入経路、工場内動線なども確認します。
工事範囲と生産エリアがどのように重なるのかを把握することが重要です。
3. 生産への影響を洗い出す
工事ごとに、
・騒音
・振動
・粉じん
・臭気
・停電
・断水
・通行制限
・設備停止
などの影響を整理します。
影響の大きさと発生時間を明確にすることで、工程を検討しやすくなります。
4. 工区・工程・仮設を計画する
生産計画を踏まえて、施工する順番や工区を決めます。
必要に応じて、夜間・休日施工、仮設通路、仮設間仕切り、仮設設備などを計画します。
この段階で、生産部門と施工会社が工程を共有することが重要です。
5. 工事前に関係者へ周知する
工事開始前には、
・工事期間
・施工場所
・立入禁止区域
・動線変更
・騒音や振動の発生時間
・設備停止時間
・緊急時の連絡先
などを工場内へ周知します。
工程変更が発生した場合の情報共有方法も決めておきます。
6. 工事中の状況を確認する
工事開始後も、生産状況や現場状況に応じて工程調整が必要になる場合があります。
定期的に工場側と施工会社で状況を共有し、生産への影響や安全上の問題がないか確認します。
7. 完了後に設備や動線を確認する
工事完了後は、施工箇所だけでなく、
・設備が正常に稼働しているか
・生産条件に問題がないか
・通路や安全設備が復旧しているか
・粉じんや廃材が残っていないか
などを確認します。
製造設備に関わる工事では、実際の生産を再開する前に試運転や動作確認を行うことも重要です。
操業中の工場改修で施工会社を選ぶ際のポイント
操業中の工場改修では、施工技術だけでなく、生産活動を理解した工程管理や調整力も重要になります。
施工会社を選ぶ際は、以下のような点を確認するとよいでしょう。
・工場改修の実績があるか
・操業中の工場で施工した経験があるか
・生産工程を踏まえた工程提案ができるか
・工区分けや仮設計画を具体的に提案できるか
・安全管理体制が明確か
・工場独自の安全、衛生ルールへ対応できるか
・設備停止を伴う工事の経験があるか
・現場責任者や連絡体制が明確か
・工程変更時に柔軟に対応できるか
操業中の工場では、工事だけを予定通り進めればよいわけではありません。
生産状況や工場側の事情を理解し、関係者と調整しながら施工できる会社かどうかを確認することが重要です。
まとめ|操業中の工場改修は生産計画と工事計画を一体で考えることが重要
操業中の工場でも、工区分けや夜間・休日施工、仮設設備などを活用することで、生産への影響を抑えながら改修できる場合があります。
一方で、電気・給排水・空調設備の切り替えなど、一時的な停止が必要になる工事もあります。そのため、「絶対に止めないこと」だけを優先するのではなく、必要な停止時間を明確にし、生産への影響を最小限に抑える工程を組むことが重要です。
また、操業中の工場では、生産設備、工場従業員、フォークリフトなどと工事が同時に動くため、仮設計画や安全管理も欠かせません。施工会社と生産管理・設備・安全管理の各担当者が事前に情報を共有し、生産計画と工事計画を一体で組み立てることが、円滑な工場改修につながります。
イー・エル建設株式会社について
イー・エル建設では、工場改修において、建物や設備の状態だけでなく、工場の生産計画や稼働状況を踏まえた工事計画をご提案しています。
操業中の工場改修や、生産停止を抑える工程計画、工区分け、仮設・安全対策でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。











